平成29年度 第1回CPD協議会シンポジウム報告
平成29年度 第1回CPD協議会シンポジウム
(平成29年6月7日開催)

 今日、欧州のIndustrie4.0や米国のIIOT に象徴されるように、世界では膨大なビッグデータを活用するIOT 技術や、深層学習型次世代AI 技術の急進展により、産業構造そのものが地殻変動を起こしつつあります。今回 のシンポジウムでは、こうした“産業新時代”に向けて産業界から求められる技術者像を探ると共に、その実現に向けた人材育成につき、関連学協会の果たすべき新たな役割について考察を深めることとしました。
 特に今回は、Industrie4.0を牽引するドイツの知日派として知られるイリス・ヴィーツォレック氏をお招きし、欧州における技術者人材育成に関する基調講演をいただいた後、協議会会員の各学協会から最新活動事例のご紹介をいただき、人材育成に関する今後の活動指針を探りました。

開催概要
日 時:平成29年6月7日(水)13:00〜16:50
場 所:公益社団法人地盤工学会 大会議室(B1F)
主 催:公益社団法人日本工学会 CPD協議会
講演等概要
※講師等の敬称略

■司 会: 尾崎 章(CPDプログラム委員会 幹事)

■開会挨拶:広崎膨太郎(CPD協議会 会長)
■講 演
  1. 特別講演  Industrie4.0のためのエンジニア育成
            ドイツにとっての機会と課題
    株式会社IRIS科学・技術経営研究所 代表取締役社長 イリス・ヴィーツォレック

    (講演要旨)
     このシンポジウムの主題は人材育成であるが、人間の能力開発において私が最も重要視しているのは、できるだけ豊かな経験に基づく独自の視野を持つことではないかと思っている。ドイツにおける人材開発については後半で話すことにして、まずは、現在世界的に話題になっている第4次産業革命Industrie4.0の背景について説明する。
     Industrie4.0の起源は2006年に遡る。当時ドイツでは産業競争力低下の危機感が高まり、国家として新たなイノベーション政策が求められていた。Industrie4.0はこうした戦略的イニシアティブの推進軸となるプロジェクトで、情報技術の活用で産業構造全体を革新する狙いを持ったものであり、政府、産業界、労働界、学界が一丸となって推進する体制が取られた。Industrie4.0の強力な推進基盤は2013年に創設されたプラットフォームIndustrie4.0に基づいている。このプラットフォームには、多種多様なステークホールダーが参加して横断連携によるインベーションエコシステムが形成されている。投下資本に対する国の収益力(EBIT利益率)、資産回転率の推移を見てみると、ドイツでは、2000年に其々12%、1.2回転だったものが、2014年には22%、1.6回転と急速な回復を示している(ちなみに日本は残念ながら、15%、1.1回転から4%、0.7回転と急降下)。
     こうした新しい時代の人材育成で最も大切なことは、新しいビジネス思考の養成、すなわち、物事を別の視点から見るための能力開発ではないかと思っている。ドイツのエンジニアリング教育の主な特徴として、産業界との密接な関係のもとに大学に優れた技術施設を有し、現実の問題解決能力を高める機会を有することにある。またドイツでは、専門学校においても、大学においても、生涯学習においても学歴と職歴とを同時に経験させるデュアルシステムが重要視されており、その有効性は経験的に実証されている。例えばほとんどの技術系大学教授は産業界経験者であり、逆に学界から産業界指導者に転ずる例も多い。
     Industrie4.0に象徴される時代は変化の激しい時代である。新たな視点から変化をすばやく見極める能力が必要であり、ドイツでも多様性を養う新たな課題に挑戦している。果たして日本の機会と課題はどうであろうか、私も興味をもって仕事をしている。
  2. ターボ機械協会継続教育委員会の活動と継続教育プログラムの紹介
    ターボ機械協会 植山 淑治
  3. 日本冷凍空調学会における教育事業の取り組みについて
    日本冷凍空調学会理事 真島 俊昭 
  4. マリンエンジニアリング技術者教育について
        <学協会における社会人教育の現状と課題>
    日本マリンエンジニアリング学会 岡田 博
  5. ECEプログラムとしてのNIMSイブニングセミナー
    物質・材料研究機構  原 龍雄
■閉会挨拶:横内 貴志男(CPD協議会副会長)
以上
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