No.425(平成9年9月15日発行)

我が国の工学系学協会のはじまり

岡本 義喬

機械工学100年の歩み−日本機械学会創立100周年記念事業−

 

サイエンス・ボランティア大活躍

第2回サイエンス・ボランティアの集い開催


我が国の工学系学協会のはじまり

岡本 義喬

 表1は明治末までに設立された主要理工系学協会の一覧表である。
 以上のほか人文、理学、医学、農学など基礎的な学問体系に基づく学協会の大半がこの時期に設立されている。
 これら古い工学学協会について設立の背景を述べよう。
1. 東京数学会社:経済学の権威で兵庫県令、貴族院議員などを歴任した神田孝平たかひらと水路部を創設し海図を作った海軍少将・柳 楢悦ならよし(民芸家宗悦の父)により創立、当初7割の会員は和算家であった。和算の衰退とともに東大数学科の創立者・菊池大麓や物理学の山川健次郎らにより東京数学物理会と改称、日本数学会と日本物理学会の源流となる。
2. 化学会:東京大学理学部化学科第1回卒業生と在学生24名により設立。初代会長は東大教授、京都帝大総長などをつとめた久原躬弦みつる。医学部薬学科や工部大学校の実地化学科の卒業生も加わり会が拡大。一般化学、応用化学、薬学、農芸化学などに範囲を広げ基礎を固めた。
3. 工学会:工部省工部大学校(1886年、東京大学工科大学に吸収)第1回卒業生7科23名による同窓会が出発点。最盛期には2000名近い会員を擁したが土木を除く(土木の独立は1914年)主要学会が独立。1922年(大正11)学協会を会員とする現在の形に改組した。初代会長は工部大学校創立の功労者で工部卿をつとめた山尾庸三子爵が1882年(明治15)〜1917年(大正6)の死去まで36年間就任。

表1 明治時代に創立された工学系主要学会

番号

創立年

学協会名

備  考

1

1877 (明10)

東京数学会社

1884年 (明17)、東京数学物理会社に改組
1946年 (昭21)、日本数学会と日本物理学会に分離

1878 (明11)

化学会

1948年 (昭23)工業化学会と合併し、現在の日本化学会

1978 (明12)

工学会

1922年 (大11)、団体会員制に移行し現在の日本工学会

1880 (明13)

日本地震学会

J. Milneらが設立した世界初の地震学会(解散)

1885 (明18)

鉱業会

日本鉱業会をへて現在の資源・素材学会

1886 (明19)

造家学会

現在の日本建築学会

1888 (明21)

電気学会

1891 (明24)

窯業協会

日本窯業協会をへて現在のセラミックス協会

1897(明30)

造船協会

日本造船協会をへて現在の日本造船学会(創立100周年)

10

1897(明30)

機械学会

現在の日本機械学会(創立100周年)

11

1898 (明31)

工業化学会

1948年(昭23)日本化学会と合併(初代会長・榎本武揚)

12

1898 (明31)

帝国鉄道協会

日本交通協会をへて現在の交通協力会

13

1905 (明38)

火兵学会

解散

4. 日本地震学会:工部大学校と東京大学で鉱山、地質を教えた J. Milne教授が創設。創立時117名の会員中、外国人が80名、英文年報を16回刊行。経済的に行き詰まり1892年(明治25)解散。
5. 鉱業会:工学会からの分離第一号。20名で設立。初代会長は日本の鉱山冶金技術の開拓者で洋式高炉を築いた大島高任たかとうが1901年(明治34)死去まで17年間就任。
6. 造家学会:工部大学校卒業生、在学生20名により設立(辰野金吾、片山東熊、曽根達蔵ら)。初代会長は各国公使、外相などを歴任した外交官・青木周蔵、2代会長は帝国大学初代総長・渡辺洪基こうきと外部から迎え、3代目に辰野金吾が就任。
7. 電気学会:工部大学校卒業生の志田林三郎、藤岡市助、中野初子はつねらが創立したが初代会長は逓信、文部、農商務相などを歴任した榎本武揚子爵が1908年(明治41)死去まで20年間つとめ、3代目に中野初子が就任。
9. 造船協会:造船界は海軍との関係が深くオランダへ留学し威臨丸に乗り組みアメリカへ初航海した赤松則良中将(妻は森 鴎外の長女)が1918年(大正7)まで会長をつとめた。工部大学校卒業生で東大教授・三好晋六郎副会長の貢献が大きい。
10. 機械学会:工部大学校卒業生の真野文二、井口在屋など50余名で設立し、初代幹事長には東大教授、九大総長をつとめた真野文二が就任。手本は彼自身も会員であり入会条件の厳しいイギリス機械学会(1847年創立、初代会長は鉄道の父ジョージ・スチーブンソン)であった。
 以上で紙数が尽きた。不十分な点をお詫びいたします。

(元土木学会事務局長)


機械工学100年の歩み

−日本機械学会創立100周年記念事業−

1. 機械学会の沿革
 帝国データバンクの調査によると1997年から2000年までの今後の4年間に創設(創業或いは創立)100周年を迎える企業は約1,900社に達し、その中でも1997年に創立100周年を迎える企業は1,169社とある。
 現在多数ある製造業(機械関係企業)の中でも創立100周年を迎えている企業は数社に過ぎず、日本における機械技術の自立は1900年(明治後期から大正初期)にかけて実現したことになる。
 そのような社会状況で、日本機械学会は明治12年(1879)に設立された日本工学会を源に、明治14年(1881)工部大学校の第3回卒業生38人のうち9名が機械系でその中の1人に真野文二博士は母校に残り(後にイギリスへ留学)、大学学位以上に尊ばれているIMechE(イギリス機械学会の会員)に一驚し、日本にも権威ある機械学会が必要であると痛感し、帰国後、有志とはかって学会創設の準備にとりかかり明治30年(1897)6月12日に正員72名による総会を開催し機械学会を創設した(真野文二博士36歳の時である)。
 その後、大正13年(1924)には社団法人の資格を取得し、平成7年(1995)特定公益増進法人として認定される。
2. 創立100周年を迎えて
 創立100周年記念事業は会員相互の記念・祝賀行事を越えて、広く社会に開かれた学会として多彩な行事を企画された。科学技術創造立国の重要な一翼を担う学会として、これらの行事を通じて、社会、特に青少年に機械工学の役割を理解していただくよう特に力を注いだ。
 主な行事

(1)集会事業

@ロボットグランプリ競技会(出場チーム170)
Aスターリングテクノラリー(出走車106)
Bロボットと未来社会のシンポジウム
C機器展示会「テクノロジー21」
D国際会議11テーマ
E専門別国内会議12テーマ
Fアジア・オセアニア機械系学会会長会議
G特別講演会など

(2)記念式典
 1997年7月18日(金)帝国ホテルで開催

(3)映像・資料事業

@PRビデオ「メカワールド」高等学校4,000校配布
A文化資料の保存活動(機械記念物「機械工作編」小冊子発行)
Bテレビ放映1997年7月19日NHK教育・再7月20日「サイエンスアイ技術立国・日本の遺産から未来を探る」

(4)出版事業

@機械工学100年の歩み(販売中)
A機械工学事典(販売中)

(5)記念品
「機械工学事典用語リスト(約13,000語)CD-ROM」を会員への記念品として45,000名に配布

(6)広報(各新聞で特集記事掲載)

@日経産業新聞 6月12日 創立記念特集
A日経産業新聞 7月18日 機械工学特集
B日刊工業新聞(第2部) 7月16日 機械工学特集
C日本工業新聞 7月17日 日機械工学特集
ロボットと未来社会のシンポジウム記事内容掲載
D日本経済新聞(夕刊) 9月3日
E日経産業新聞 9月4日

(7)支部行事
 継続実施中。

3. 創立100周年記念事業を実施して
今は、「歴史に残る資料を大切に保存し、文化遺産として次世代に伝えなければ」と考えて資料整理をしている。特に「100年のあゆみ」の資料編は事務局担当となったが資料不足を痛感した。しかし、創立100周年ということで、関係方面から本会に関係する資料が提供されつつあるのは嬉しい限りである。
ここにその一例を紹介する。

@初代会長の若き日の写真(イギリス機械学会より)
A初代会長の講義ノート

(高橋 征生)


サイエンス・ボランティア大活躍

 8月8日 (金)から3週間にわたって「パシフィコ横浜展示ホール」で開催された“産業技術歴史展 ─テクノフェスタ21─”において、わがサイエンス・ボランティアが大活躍をした。
 今回の産業技術歴史展は、関係学協会および業界団体が協力して制作したブースによって構成されたユニークな展示であった。日本工学会もテーマ展示のコーナーを担当し、毎日サイエンス・ボランティアが説明・案内にあたった。
 今回の展示会にはサイエンス・ボランティア90名から奉仕の申出があり、毎日15〜20名が、航空宇宙/鉄道/化学/電子機械/建築といったコーナーで説明・実験・案内を勤めた。入場者は約51,200であった。
 写真は共通テーマAで「人間と金属」と題して講演をしている日本工学会須田事務局長。
<自我自賛>大変分かりやすいと好評であった。


第2回サイエンス・ボランティアの集い
開催

 第2回サイエンス・ボランティアの集いが、産業技術歴史展が開かれているパシフィコ横浜会議センターで8月22日(金)開催された。参加者は70名を数えた。
 この集いは、ボランティアをお願いする立場の科学館、学協会、企業から3つの事例発表と、実際にボランティア活動をしている個人の方3人から体験報告を頂き、基調講演で締めるといった構成で企画した。今回のプログラムを紹介すると次のようであった。
1. 事例発表
(1) 千葉県立現代産業科学館の活動

岡田厚正館長・渡邊 誠普及課長

 大変新しい科学館です。是非見学して下さい。
(2) 青少年を対象とする日本建築学会の活動

日本大学生産工学部 若木 滋教授

 学会も楽しいといったお話。みんなも参加しましょう。
(3) コネットプランにおけるボランティア活動

NTTマルチメディアビジネス開発部 篠原正典部長

 NTTのホームページを覗いて見ましょう。
2. サイエンス・ボランティアの活動報告
(1)国立科学博物館でのボランティア活動を経験して

国立科学博物館教育ボランティア 坂尻昭一

 さすがボランティア8年のベテランの含蓄ある内容。
(2)蛍の光の不思議さから始まった私の研究とボランティア活動

凸版印刷(株)総合研究所 伊藤裕一

 来年は「越谷」に行って伊藤さんと一緒に蛍を観察しましょう。
(3)わかる「星とその動き」学習を求めて

元穴吹情報専門学校長 山田幹夫

 わざわざ香川県高松からのご講演、天文学身近に。
3. 基調講演
21世紀に向かって青少年教育

メディア教育開発センター所長 坂元 昂

 ご講演の内容はともかく、われわれ学会屋にとって正に模範講演でした。ビジアルの使い方、とくに原稿の正確・明確・美的感覚。お話しのテンポ。各学協会で坂元先生のお話を発表者に聞かせて下さい。

(須田)