No.426(平成9年11月15日発行)

土木学会員による弦楽合奏団 ”アンサンブル・シヴィル”

 

行政改革会議への要望 
 〜科学技術立国に向けた科学技術政策立案・推進機能の強化〜

日本工学会会長 石川 六郎


土木学会員による弦楽合奏団
”アンサンブル・シヴィル”

 土木学会には学会員の土木技術者だけで構成された”アンサンブル・シヴィル”という実にユニークな弦楽合奏団がある。この名前は「土木工学」を意味する「シヴィル・エンジニアリング」にちなんだものだが、工学系はもちろんのこと、学会員による合奏団を持っている学会というのは世界でも極めてまれだ。もともと土木学会創立八十周年記念式典での演奏を目的に結成されたが、期待をはるかに上回る高い演奏レベルにその場限りでの解散を惜しむ声が多く、現在も活動を続けている。
 一九九三年十二月、学会誌での募集に応じた十七名が四谷の土木学会図書館に集合し、アンサンブル・シヴィルは産声を上げた。合奏団結成の中心となった東京工業大学名誉教授で日建設計特別顧問の中瀬明男さんは、「不安一杯だったが、ふたを開けたら驚いた」と当時を懐かしむ。それもそのはず、「学会員の家族にまで募集枠を広げないと人数や演奏レベルを確保できないのでは」という心配をよそに、学会員だけで十七名という理想的な人数のうえ、楽器編成のバランスも理想的。しかも全員が全国各地のアマチュア・オーケストラや合奏団で活躍する”バリバリの現役”だった。ただでさえ仕事をこなしながら演奏活動を続ける人は少ないのに、これはまさに奇跡的なことだ。
 団員それぞれが仕事や演奏活動に忙しい中、数少ない練習でも次々とレパートリーを増やし、九四年九月には札幌での全国大会の市民参加行事で初舞台を飾り、本来の目的である同年十一月の横浜での八十周年記念式典では、見事に花を添える出来映えだった。さらに、この時来賓として出席していた前英国土木学会会長の目にとまり、翌年七月にはロンドンの同学会行事での演奏が実現したのである。この演奏は大好評であり、クラシック音楽の本場とはいえ楽器をこなす技術者は珍しいらしく、まさに「信じられない」という印象を与えたようだ。この時ヴィヴァルディの「春」のソロを堂々と弾きこなしたコンサートマスターの神前和正(コウサキカズマサ)さん(京阪電鉄より株式会社かんこうへ出向中)は、「本当に土木技術者かと何度もきかれた」と語る。とかく”視野が狭い”と思われがちな日本人技術者の面目を一新したことは確かだ。 その後も全国大会を中心に演奏活動を続けているが、難しい曲にも挑戦し、練習や本番の出席率は高いなど、団員の意気は盛んだ。神前さんは九十六年春から癌に冒されながらも、入退院の合間を縫って参加している。それほど熱が入るのは「やはり土木と合奏に共通点があるから」と語る。「創造の喜び、それも共同作業で成し遂げる楽しみがあります。合奏では一人一人がしっかり自己主張しながら全体として調和をとるのがミソなんですが、まさに土木事業と同じなんですね」。確かに建築とは違い、土木では個人が表に出ることは少ないが、絶妙のチームワークで巨大プロジェクトもこなしてゆく。そういったチームプレーに生き甲斐を感じる土木技術者こそ最も合奏にふさわしい、というのが今や団員共通の認識だ。世界共通語と言われる「音楽」を通じ、「土木」ひいては「科学技術」を世界にPRしようと全員が燃えている。この意気込みもあながちオーバーでないことは、ロンドンでの反響をみれば明らかだ。


行政改革会議への要望

〜科学技術立国に向けた科学技術政策立案・推進機能の強化〜

日本工学会会長 石川 六郎

 行政改革の推進は21世紀に向けて我が国の発展を期すうえで最重要な課題の一つであり、貴会議の成果に大いに期待しているところであります。
 行政改革を進めていただく上で最も重要なことは、全地球的に益々スピードアップする変革に迅速に対応して政策を立案・推進できるように、国の機能を抜本的に再編成し、強化あるいは効率化するという視点であります。
 つきましては、我が国の理工学系学協会93団体(総会員数約65万人)を傘下に擁する日本工学会としても、省庁再編を含めた行政改革を検討していただく際に、科学技術政策立案・推進機能強化の視点を是非加味していただきたく、以下の通り、意見・要望を申し述べさせていただきますので、何卒ご高配賜わりますようお願い申し上げます。
もとより、産・学・官を横断し、科学技術振興や人材育成の実務に従事する専門家集団からなる私ども学協会と致しましても、国の科学技術政策立案・推進機能の強化に向けて積極的に関与・協力させていただく所存であります。

1. 科学技術立国に向けての基本的あり方
 国土狭小、天然資源に恵まれない我が国が、地球的な大競争時代において世界のフロントランナーとしての地位を確立し、同時に地球社会の一員としての役割を果たすことはもとより、アジア・太平洋諸国との共生を図りつつ更なる繁栄と発展を続けるためには、科学技術立国を志向していくことが不可欠である。
 このような背景のもとに、平成7年11月15日、科学技術基本法が議員立法により国会にて全会一致で可決成立し、翌平成8年7月2日には総合的な方針と施策を定めた科学技術基本計画が閣議で決定された。
 このことにより、現下の大変厳しい国家財政状況の中で、科学技術振興に向けて国費の重点投入が行われようとしているが、次世代につなげるこれらの国家投資を最大限に有効活用するためには、全地球的変革に迅速に対応できる科学技術政策立案・推進機能の強化が強く求められる。
2. 科学技術政策立案・推進機能強化の具対策
(1)首相直轄の科学技術政策立案組織の設置
 省庁の枠を超えた国家的視点に立ち、国家の要請と科学技術の進歩を洞察しつつ、国の経営戦略としての科学技術政策が立案されなければならない。
 このための具体的施策として、米国の大統領府科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy)のような、首相直轄の科学技術政策を立案する組織の設置を検討すべきである。この組織が、産業界や学会の意見を十分反映させながら、科学技術に関する国家戦略の策定、予算の配分、各省庁における運用面での整合成のチェックなどを担うことになる。
(2)各省庁における技術系人材の幅広い任用、産・学・官の専門家活用のためのシステム構築
 秒進分歩といわれる科学技術の進歩と、高度情報通信社会の本格的な到来に伴い、瞬時にして全世界に知識・情報等の移転がなされることもあって、科学技術が社会に及ぼす影響は益々大きくかつ重要になっており、国のあらゆる機能に関連すると言っても過言ではない。
 従って、各省庁における政策の立案・推進においても、科学技術の動向やその活用を十分反映できるように、技術系人材の幅広い任用や産・学・官の専門家や研究・調査組織の積極的な活用を行うことができるシステムの構築を図るべきと考える。