平成13年10月10日発行

 日本工学会ニュース
The Japan Federation of Engineering Societies (JFES)
No. 432




技術者トータル教育と学協会の役割
日本工学会 PDE協議会プロジェクトリーダー  
高橋 宏


 第二期科学技術基本計画では、研究開発の投資総額二十四兆円が提示されている。経済復興だけでなく、教育改革や環境問題など様々な問題解決に期待が寄せられている。日本の工学は明治以降、細かく細分化され専門性を高めてきたが、複雑さと高度化するか学術の基盤研究及び先端研究は専門分野別に行うことはもはや難しい。工学分野だけでなく、理学・医学・薬学・農学なども含めた複合的な研究を進めてゆくことが重要である。日本工学会は工学系の各学協会と連携をとりながら産業界、官界、大学等にも積極的に働きかけて学協会が抱える共通問題に取り組もうとしている。
その問題の一つに技術者の社会的地位の向上がある。 高度な科学知識(工学)を基盤にしてその応用の業の担い手が技術者である。地球の本質を損なうことなく、人類の豊かさを増す発展の原動力として期待がかけられている。また、あらゆる分野でのグローバリゼーションの進む中、激化する経済競争に対して技術革新による国際競争力の強化が望まれている。これに対応した一貫システムは教育機関、研究機関、学協会の連携により構築される。具体的には、大学等高等教育機関における工学教育の改善、技術者の能力を客観的に証明する技術者資格制度の普及・活用、いまだ未整備の技術者の継続専門能力開発の仕組の策定を通じて、技術者の資質と能力の向上を図り、生涯にわたり活躍する技術者育成・確保の一貫したシステムとして構築することが考えられる。
このようなシステムを構築するに際し、修習技術士の技術者資格受験のための要件である実務教育修習(IPD*)、技術者資格取得後の継続能力開発(CPD*)、技術者の継続能力開発全体プロセス(PDE*)が必要となる。「PDE協議会」は、このような多様なCPDを全体として効率的、かつ整合性あるシステムとして維持し、個々のCPD教育の評価、履修の第三者証明を行う中核組織体となろう。学協会は、そのプロセス運用の中核機能として利点を生かし、国際的に通用するセミナーや実務教育を主催し、かつ一般の技術者にも門戸を広く開け、社会にサービスすることで会員増員や学会活動の活性化が図れる。CPDのためには、社会的ニーズに応える多様で相互に整合性のある教育コンテンツの充実や、利用者の利便性を高めた遠隔学習システムの構築が不可欠である。産業界、技術者団体等と協力して技術者の能力開発を促進することが学協会と「PDE協議会」の今後の課題である。


*IPD: Initial Professional Development
*CPD: Continuing Professional Development
*PDE: Professional Development of Engineers



100万人科学技術者代表者集会
「科学技術の新世紀」シンポジウム

プログラム

9:30〜9:40 開会の辞 (社)日本工学会会長 大橋 秀雄
総合司会 (社) 日本工学会理事  小野田 武
        挨  拶 日本学術会議第五部長 冨浦 梓

第泄煤@ 「科学技術基本計画とその推進」
第部  「重点分野・領域の推進戦略」
9:40〜10:20 (1)科学技術システムの改革
14:10〜14:45 (1)環境
           内閣府政策統括官 大熊 健司
            総合科学技術会議議員 吉川 弘之  
10:20〜11:00 (2)日本産業の国際競争力強化
14:45〜15:20 (2)情報通信
            経済産業省大臣官房審議官 濱田 隆道
            総合科学技術会議議員 桑原  洋
11:00〜11:40 (3)大学改革
――― 休 憩 15 分 ―――
            文部科学省大臣官房審議官 清水 潔
15:35〜16:10 (3)ライフサイエンス
11:40〜12:00 技術者の育成と確保
            総合科学技術会議議員 井村 裕夫
          工学院大学学長 大橋 秀雄
16:10〜16:45 (4)ナノテクノロジー・材料
――― 休 憩 50 分 ―――
            総合科学技術会議議員 白川 英樹
12:50〜13:10 「21世紀の科学技術」
16:45〜17:15 自由討論(30分)
          日本学術会議会長 吉川 弘之
17:15〜17:30 閉会の辞 (社)日本工学会副会長 佐々木 元
13:10〜14:10 基調講演 司会(社)日本工学会顧問 内田 盛也
17:30〜18:00 移動(関係者による記者会見)
          「我が国の未来と科学技術基本政策」
           科学技術政策担当大臣 尾身 幸次

第1部「科学技術基本計画とその推進」


(1) 科学技術システムの改革
         内閣府政策統括官
           大熊 健司
1956年に科学技術庁が設立され、国家として科学技術政策の重要性が認識され、本年(2001)内閣府に設立された総合科学技術会議において科学技術の総合的政策が議論される。
 平成14年度の「科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」において、「科学技術の戦略的重点化システム改革」を示している。
 産学官の連携推進のため、研究効率促進法、任期つき任用、特許の扱いなどの改善、さらに産側の積極的対応も期待したい。
また、科学技術と社会との関係、自然科学と人文社会学との関係等問題を総合科学技術会議のみではなく、各場面でも議論をしていただきたい。
 科学技術活動を国際化するためにも世界水準の研究環境の構築が必要である。
(2)日本産業の国際競争力強化
      経済産業省大臣官房審議官
           濱田 隆道
 科学技術の取組でIMDの『世界競争力白書』が引用される。日本の競争力は科学総合ランキング対象47カ国中2位であるが、大学教育が国際経済競争に対応しているかは47位、経営者に起業家マインドあるかは、47位と若干問題がある。
 平成14年度の方向としては、企業と先生と一緒に基礎的・基盤的研究を行い、大学からベンチャーが生まれるような産学連携に取組んでいただきたい。
 アメリカのベンチャーは軍やNASA等の政府調達が助けている面が多い。日本でも政府調達的なものを意識し、また「国際標準戦略」も施策として必要である。
 今後、イノベーションの創出を促進し、我が国の経済再生を図るため予算面の取組に加え、民間企業の研究開発が効率的・効果的に事業化・設備投資につながるイノベーションシステムの構築が必要である。
(3)大学改革
      文部科学省大臣官房審議官
           清水  潔
6月の「大学(国立大学)の構造改革の方針では、1」国立大学の再編・統合を進める、2)国立大学に民間的発想の経営手法を導入する、3)大学に第三者評価による競争的原理を導入する。の3つの柱を立てている。
 科学技術省と文部省が統合され、新しく総合的な展開がしうる組織的・政策的な基盤ができている。
 
技術者の育成と確保
          工学院大学学長
           大橋 秀雄
 現代社会における技術者の責任、儀儒者の認知の資格制度、技術者の質的向上について考えるべきである。
 若者の技術離れをどう防ぐか、技術者の一貫した能力開発システムの開発が急務である。
  
  21世紀の科学技術
         日本学術会議会長
           吉川 弘之
 Sustainable development善意の科学の破綻、World Conference on Science、研究動機、(真理の探究、欲望の充足、機器の回避)日本学術会議の重さについて。
 科学研究のカテゴリー、科学技術政策(基本): @長期的な政策立案に寄与する研究 A先端を開拓する研究 B学術研究の基盤を強化する研究 C学術体系を強化する研究について。


2001年9月4日日本学術会議にて行われた
100万人科学技術者代表者集会
「科学技術の新世紀」シンポジウム
での基調講演

「我が国の未来と科学技術基本政策」
科学技術政策担当大臣 尾身 幸次

 総合科学技術会議は月に一度総理をチェアマンとし、筋書きのない議論をしている。経済財政諮問会議と同格であり、科学技術戦略の中心に据えられるものである。戦略として、ライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の重点4分野を決め、日本の科学技術の研究開発体制の改善のために、研究開発のシステム改革、産学官の連携の強化等議論している。
 大学の講座制のもとで、教授、助教授、助手・・・というヒエラルキーがあり、若者の能力が生かせないシステムとの批判もあり、これは大学改革の問題でもある。産学界からは、産学連携を進めるため非公務員 型にしないと硬直的な制度では弾力的なことがなしえないとの声がある。10人中9人は「大学を非公務員に してほしい」と言うが、国立大学の先生方は返事を渋る。元気な人は例外なく「非公務員にしてくれ」との要望があり、そういう方向に努力したい。
 国際化の中で、終身雇用、年功序列、横並び、護送船団という社会を変えないと競争に勝てず、うまくできない企業、大学、組織や人は脱落することになろう。
学部・大学院卒も給料差がないことは憂うるべきで、産学官連携強化を図りたい。そのため産学官連携サミットを考えており、大学・産業界・行政のトップが集まる会を開催し、地域から日本全体としての科学技術で地域・国づくりのコンセンサスをつくり上げたい。
 科学技術予算のについて議論し、財務省に持ち込み、12月段階で科学技術の分野に関して約3兆5,000億円の予算を考えるべきであると考えている。
 1月6日の行政改革後、新体制の年となり、9月の総合科学技術会議の役割は重要である。ルールができあがるとそのとおりの予算編成が今後ずっと新しい行政体制でいくため、大事な時期に差しかかっている。


第2部「重点分野・領域の推進戦略」
(1)環境
       総合科学技術会議議員
          吉川 弘之
 環境研究というカテゴリーは、まだ成熟していないが、世界的な流れは科学技術研究の課題になりつつある。
 (2)情報通信
総合科学技術会議議員
      桑原  洋
 情報通信分野は、経済規模が大きく、日本産業の経済を牽引する力になるべきである。新しい文化を我々が提案し受け入れれば、日本からデファクトが出るという状況をつくり得るであろう。
 (3) ライフサイエンス
      総合科学技術会議議員
           井村 裕夫
 21世紀には、ライフサイエンスが爆発的に進歩するであろう。人類が直面するであろう諸問題はライフサイエンスの知識が不可欠になる。(4)ナノテクノロジー・材料
     総合科学技術会議議員
          白川 英樹
私自身は、導電性高分子の発見と開発でノーベル賞をいただいたが、私の研究を例にナノテクノロジー及び材料の研究の問題点を浮き彫りにしたい。

第11回「科学技術の新世紀」シンポジウムを終えて
日本工学会会長 大橋 秀雄
 当シンポジウムに、学協会を含め各界から多数の参加を賜りまして厚くお礼申し上げます。また、ご公務ご多端の折にもかかわらず快くお引受けいただきました基調講演の尾身大臣をはじめ、諸先生方には厚く感謝いたします。
 当シンポジウムも回を重ねるごとに学協会をはじめ、大学関係・官公庁・企業関係と広く関係者の注目するところとなり、科学技術の振興にいささかなりとも貢献しておりますことは、大変喜ばしいことと思います。
 ご高承のとおり、イデオロギーの対立を軸とした世界秩序が崩壊し、価値観が多様化した今日、新たな世界秩序を構築し、関係諸国と積極的に交流し相互協力をすることが求められておるのではないかと思います。
 わが国の科学技術による国際貢献の声が広く国民に浸透していく中で、科学技術が身近に感じられるような社会環境の構築、人材確保の必要性、創造性を発揮できるよう研究開発環境の整備、多様な人材の科学技術活動への参加等、科学技術の果たす役割はますます重要となってきております。
 以上、科学技術に関する昨今の動向を踏まえて、第11回「科学技術の新世紀」シンポジウムが、種々の問題意識を共有し、これからの科学技術の推進と展開において有意義であったのではないかと思います。
 終わりに、このシンポジウムのために会場をお貸しくださいました日本学術会議をはじめ、格別のご協力を賜りました関係各位の皆様に心よりお礼申し上げます。




科学ファン必携! ウエブパスポート


技術者の育成に力を入れる日本工学会は、科学技術の未来に夢をもつ市民を対象に「サイテク・アイランド・ラピュタ・パスポート」を発行、アクセスしてポイントをためればイベントに参加できるサービスを始める。10月からホームページで参加者を募る。
 9月4日に開いた「科学技術の新世紀」シンポジウムの議論を基に、情報発信の場としてサイテク・アイランドをウエブに設けることにした。「ラピュタ」は、ガリバー旅行記に出てくる天飛ぶ島で、科学技術万能思想への批判も込められている。
 このページで学会発表の抄録や国の科学研究費補助金の大学別ランキングが分かるようにし、高いポイントを集めた人に記念品を贈ることを計画している。(朝日新聞2001年9月28日(金)夕刊)

平成13年10月1日よりリニューアルされました。
 科学技術に興味のある方は是非パスポートを取得して下さい。ご希望の方は、“SCITECH ISLAND LAPUTA”をクリックして登録フォームに必要事項をご記入の上、送信して下さい。後日パスポートを送付致します。学会発表データ・大学ランキング・新聞記事のコンテンツはパスポートを取得しないとご覧になれませんのでご了承下さい。

〈コンテンツ紹介〉
目安箱 科学技術に関しての疑問やご意見等
シンポジウム シンポジウム最新情報
学会発表データ 1994〜1999年度の学会発表データ
大学ランキング1996〜1999年度の理工系科研費採択サンプル

〜240万技術者の飛躍を目指して〜

平成13年9月4日 発  行
編 者  社団法人 日本工学会
発行者  村田誠四郎
発行所  丸善株式会社
定 価  1,500円技術者の能力開発
・ 技術者の能力を開発・生育するためには!
・ 技術者・経営者・教員の方必読!

〜科学技術の新世紀〜

編 者  社団法人 日本工学会
発行者  村田誠四郎
発行所  丸善株式会社
定 価  1,500円科学技術の新世紀

 


閑中忙言

 面目を一新した「日本工学ニュース」をお届けする。小職が日本工学会に勤めて16年になるが、こんなに目のまわる忙しさを経験したことがない。世の中がすべてめまぐるしくなってしまったのであろうか。机の周囲を見てもコンピュータが並び、机の上にまでノートパソコンが乗っかっている始末。まるで機械に使われている感じである。昔の話をすると歳をとったと言われる。しかし、小職の学問範囲を超えることが多すぎる。
 しかし、小職でも楽しい現代がある。是非、日本工学会のホームページを覗いて見て頂きたい。「ひょっこりひょうたん島」ならぬ“サイテク・アイランド・ラピュタ”が浮かんでいる。パスポートを取得し遊びに行っては・・・

(事務局長 須田 了)