平成14年2月1日発行

日本工学会ニュース
The Japan Federation of Engineering Societies (JFES)
No. 433

 

工学と工業だけが日本を救う ― e-learningが意味するもの −
武田 邦彦(芝浦工業大学)

 


 国土が狭隘で化石資源の乏しい日本が発展する道は、規制緩和でも不良債権処理でもない。工学と工業が世界で断然、高いレベルを保ち、それに向かって努力することである。
 日本が英米に宣戦を布告し第二次世界大戦がヨーロッパから全世界に拡大した直後、東洋の小国、日本の航空隊が大英帝国の戦艦プリンスオブウェールズを撃沈した。これはまさに衝撃的事件であった。極東の島国、「フジヤマ、ゲイシャ」、そして刀を差し丁髷を結っている奇妙な国の雷撃機が、まさか皇太子の名を冠し七つの海を支配した大英帝国の旗艦を撃沈することなどありえないからだ。もし、日本の技術陣が戦艦と陸軍の突撃にしがみついていたらこんな奇跡は起こらなかっただろう。それは戦後の復興でも高度成長でも同じであった。
 “e-learning”は現在の雷撃機であり、「学校」という名の戦艦を撃沈する武器である。
冬の寒い日、かじかんだ手を擦りながら図書館が空くのを待ち、僅かな知識を古ぼけた本棚から少しずつ得る苦労は無くなり、「どこでも、いつでも、何度でもそしてどんな勉強でも」できる。それがe-learningの第一の貢献だ。第二は個性と能力に応じることができることだろう。だれでもウィンブルドンに出場できるわけではないが、テニスを楽しむことはできる。今までは何十人といる教室で個性と能力に関係なく一律の講義を受けるのだから、勉強がイヤになるのも頷ける。
 それでも”e-learning”が爆発的に伸びない理由は二つある。第一にe-learningを推進する機関が商業的収益を強調すること。教育はあくまで受け手である学生の為に行われるものであり、それがたとえ社会人であろうとも「e-learningを導入すると教育経費がこれだけ減ります」などのコピーは教育とは相容れない。第二にe-learningを推進する主体である高等教育機関自体がe-learningを取り入れようとしないからだ。哲学や法学を専門とする文科系の人がITを理解できないのでe-learningを忌避することがあっても、工学はその生みの親である。戦艦にノスタルジアを感じることなく、雷撃機で戦闘を行うことができるのは工学だけである。
 幸い、CPUが速くなり、ハードディスクの容量が格段に増え、ブロードバンドが実現しようとしている。ITの機器はそれほど高価ではないし、企業も大学も教育の連帯を望んでいる。技術者のレベル向上と新しい分野への転換、起業家としての力なども求められている。周囲環境は抜群によく、ここまで不透明な日本の中で”e-learning”だけが透明である。その透明性を活かして教育のグランド・デザインを描く。
 そのためにはまず、大学と企業が一体となって技術者の能力向上の教育システムを作ることだ。そこに日本の最高の「知」を集結する。240万人を擁する日本の技術陣は年間数十万円程度の参加費を支払い、生涯にわたり最新の技術を「どこでも、いつでも、何度でも」必要に応じて学ぶことができ、更に最新の技術情報をコンピューターから得ることができる。このことが実現できれば、技術者は自らの技術が陳腐化する懸念から開放されるだろう。先生は若い人の知識の低下を嘆くかわりに新しい知識を豊富にもった技術者と快適なディスカッションを楽しむことができ、経済界は世界一のレベルを持つ技術者が次々と富を産んでくれることに満足するはずである。何でも前向きに行こうではないか!

著書:「エコロジー幻想」(青春出版)、「有機材料工学」(シグマ出版)、「日本の将来と産学連携」(丸善)他

 

 


第12回 シンポジウム「産学連携の新しい展開」
− 学協会の役割 −

プログラム

10:00〜12:00 Web活用デモンストレーション

(氈j日本工学会ポータル「ラピュタ」デモンストレーション
()e-ラーニング制作支援ソフト
(。)コンベンション活動サポート
○総合司会 日本工学会理事 松村 正清

13:10〜13:20  開会の辞・・・・・日本工学会会長 大橋 秀雄

13:20〜13:30  挨  拶・・・・・日本商工会議所名誉会頭 石川 六郎(鹿島建設(株)名誉会長)
13:30〜14:00  「産・官・学のイニシアティブ」・・・・・・日本学術会議会長 吉川 弘之
14:00〜14:30  「産学連携における学協会の役割」・・・・・日本工学会理事 小野田 武(三菱化学(株)顧問)
14:30〜15:00  「今後の産学連携のあり方」・・・・・日本工学会副会長 佐々木 元(日本電気(株)会長)
15:20〜16:20  学協会の分野別活動事例・・・・・
                  @「科学技術振興と土木学会の貢献」土木学会専務理事 古木 守靖
                  A「産学協同の新しい取り組み」日本機械学会研究開発推進センター センター長 松崎  淳
                  B「化学工学会の役割の変化と改革」化学工学会副会長 小宮山 宏
16:20〜17:00  総括討論・・・・・コーディネータ 技術ジャーナリスト 西村 吉雄
 

 

会場の様子1

 

会場の様子2   会場の様子3

 

会場の様子4

 

会場の様子5   会場の様子6

 

 


産学官連携の重要性
日本商工会議所名誉会頭 石川 六郎

 

 国土矮小な我が国が持続的発展を 遂げるためには、構造改革を断行て、経済社会に全般にわたる高コト体質を是正するとともに、科学術による新産業創造と人類社会へ貢献を強力に推進することが不可であると思われる。
 独創的な科学技術創造を担う人材や社会の健全な発展に資するべく、科学技術を適切に活用できる人材を育成する上でも産学官の連携は一段と重要になる。産学官への技術的な連携促進への期待はそれぞれの分野でかってない高まりを見せている。産学官の各セクターを横断する人材や情報の交流を活性化することが,基本であり、学協会の役割は大変重要なものであると考えている。

 

 


シンポジウムの開会
日本工学会会長 大橋 秀雄

 

 日本工学会は学協会の集まりである。学術情報の発信の基地としての学協会は技術革新により活動の場飛躍的に拡大された。時代は、学会に多様なニーズに対応できる体と公益的活動を求めてきている。
 ここに学協会の立場で「産学連携をいかに進めるのか」を考え、ひいては日本の経済の低迷に役立ちたいと日ごろから考えており、きょうのシンポジウムを計画した次第である。

 

 


「産・官・学のイニシアティブ」
日本学術会議会長 吉川 弘之

 

 産学連携とは本来夢のある話である。当初「産学連携」を考えていた。 しかし、産業は、本来競争すべきものであり、国益に関わるものという認識のもとに「産・学・官」の体制を作り1994年にスタートし、7年目の現在に至っている。
 「産・学・官」は、縦型のものではなく、対等性・対照性のものであり,社会の中で目的において共有する。
 好奇心によって知識を生み出し、知識を生み出す仕組みを科学という。
 産業はそれを使って富を作るが、さらに一般知識としての知識を使う知識が必要である。産学官の本質的な可能性を生み出せるためには、こういう循環が必要である。

 

 


産学連携における学協会の役割
日本工学会理事 小野田 武

 

1、産学連携:空前絶後の追風
  ・文部省戦略的取組1987年共同研究センター設置
  ・諸制度改革取組:第1次科学技術基本計画
  ・以降雪崩れ現象:第2次科学技術基本計画

2、踊っているキーワード
  ・共同研究・委託研究の推進
  ・技術移転加速・ベンチャー創出
  ・人材育成・流動化
  ・世界水準のシーズ創出への大学

3、短期的狙いと学協会の役割
  ・短期的成果とその持続

4、中期的狙いと学協会の役割
  ・中期的成果とその持続

5、長期的狙いと学協会の役割
  ・長期的成果と若者を惹きつける産学連携の定着

 



 

今後の産学連携のあり方
日本電気(株)代表取締役会長 佐々木  元

 

産学連携の必要性を言われるようになって久しい。
それぞれのミッションとは:

“産”については
     ・技術革新による新産業の創出
     ・生産性の追求による競争力の向上
     ・雇用の創出

“学”については
     ・創造的な「知の源泉」
     ・「知」の人材の育成.輩出

“官”については
     ・ビジョンの策定
     ・規制緩和等、諸スキームの整備

産学官連携の6大課題:
      (1) 共同研究,委託研究の促進
      (2) 技術指導,技術移転の促進
      (3) 大学発ベンチャーの創出
      (4) 人材交流の活性化
      (5) 産学連携の観点から見た大学改革
      (6) 産学連携の機運の醸成

日本経済再生に向けて:
      @ 閉塞を打破する知恵
      A 構造改革を乗り切る勇気
      B 再チャレンジへの優しさ

 

 


遠隔教育・eラーニングシステムのご紹介
株式会社 日立製作所

 

 近年、質の高い教育を効率良く提供するための手段として遠隔教育・eラーニングが脚光を浴びており、日立はコンサルテーションからシステムの提案、構築までトータルなソリューションの提供を行っています。
 この度日立は、リアルタイムの講演・講義を配信しながら蓄積し、コンテンツを自動生成するシステムを開発致しました。これにより貴重な学会の講演・講義を将来にわたって保存し、有効に活用することが可能となります。



 

 


「ネット広場」を活用した技術者支援
富士通(株)シニアコンサルタント 松原 真樹

 

 「ネット広場」は、Web上での“情報交換の場”を提供するものです。ここでの活動により、分野を横断した学協会会員間による協働、学協会の運営活動に寄与します。
 「ネット広場」は次の機能を骨組みとしています。

(1) カテゴリ:学会毎の部屋(カテゴリ)を設定し所属する会員(技術者)に学会の扉からサービスを提供することが可能です。

(2) Know−WHO:この“場”を利用するヒトの情報を登録します。ここで登録した情報は発信した知識と関連し、発信者と発信コンテンツの間で相互に参照できる関係になります。

(3) プロジェクト(プラットフォーム):技術者の活動単位(課題、検討テーマ、論文テーマ等)毎の小部屋で、リーダ/参加者登録、掲示板機能、ファイル共有機能による支援があります。



 

 


− WEBを使った講演原稿受付 −
学会ウェブドットネット(gakkai-web.net

 

 研究会やシンポジウム等の学術大会の講演募集において、WEB受付システムを独自に開発・運用し、既に多くの学会でご利用いただき、年間30,000件以上の申込を取り扱っております。
 主な特徴としては、◎国内、国際を問わず様々な講演申込に対応、◎登録した内容の確認・修正・取消が可能、◎論文原稿をPDFで送信可能、◎問い合わせ窓口や、紙面申込の代行、◎受付期間だけシステム・機器をレンタルすることによる導入費の大幅削減が可能等があげられます。またプログラム編成情報を処理する後処理システムをご活用いただくことにより、講演通知のメール化やプログラム版下の自動組版、論文集のCD-ROM化等を効率的に実現することができます。
 弊社システムをご利用いただければ、単に受付だけのシステムではなく、サーバーの準備受付〜製作物まで一括したアウトソーシング化が実現できることになります。


 

 

 

科学ファン必携! ウエブパスポート


技術者の育成に力を入れる日本工学会は、科学技術の未来に夢をもつ市民を対象に「サイテク・アイランド・ラピュタ・パスポート」を発行、アクセスしてポイントをためればイベントに参加できるサービスを始める。10月からホームページで参加者を募る。
 9月4日に開いた「科学技術の新世紀」シンポジウムの議論を基に、情報発信の場としてサイテク・アイランドをウエブに設けることにした。「ラピュタ」は、ガリバー旅行記に出てくる天飛ぶ島で、科学技術万能思想への批判も込められている。
 このページで学会発表の抄録や国の科学研究費補助金の大学別ランキングが分かるようにし、高いポイントを集めた人に記念品を贈ることを計画している。(朝日新聞2001年9月28日(金)夕刊)

平成13年10月1日よりリニューアルされました。
 科学技術に興味のある方は是非パスポートを取得して下さい。ご希望の方は、“SCITECH ISLAND LAPUTA”をクリックして登録フォームに必要事項をご記入の上、送信して下さい。後日パスポートを送付致します。学会発表データ・大学ランキング・新聞記事のコンテンツはパスポートを取得しないとご覧になれませんのでご了承下さい。

〈コンテンツ紹介〉
目安箱 科学技術に関しての疑問やご意見等
シンポジウム シンポジウム最新情報
学会発表データ 1994〜1999年度の学会発表データ
大学ランキング1996〜1999年度の理工系科研費採択サンプル

〜240万技術者の飛躍を目指して〜

平成13年9月4日 発  行
編 者  社団法人 日本工学会
発行者  村田誠四郎
発行所  丸善株式会社
定 価  1,500円技術者の能力開発
・ 技術者の能力を開発・生育するためには!
・ 技術者・経営者・教員の方必読!

〜科学技術の新世紀〜

編 者  社団法人 日本工学会
発行者  村田誠四郎
発行所  丸善株式会社
定 価  1,500円科学技術の新世紀

閑中忙言

 面目を一新した「日本工学ニュース」をお届けする。小職が日本工学会に勤めて16年になるが、こんなに目のまわる忙しさを経験したことがない。世の中がすべてめまぐるしくなってしまったのであろうか。机の周囲を見てもコンピュータが並び、机の上にまでノートパソコンが乗っかっている始末。まるで機械に使われている感じである。昔の話をすると歳をとったと言われる。しかし、小職の学問範囲を超えることが多すぎる。
 しかし、小職でも楽しい現代がある。是非、日本工学会のホームページを覗いて見て頂きたい。「ひょっこりひょうたん島」ならぬ“サイテク・アイランド・ラピュタ”が浮かんでいる。パスポートを取得し遊びに行っては・・・

(事務局長 須田 了)