「第3回科学技術人材育成シンポジウム」催事報告
第3回科学技術人材育成シンポジウム
2012年1月21日開催

 わが国の未来を切り開くために必須である科学技術人材育成、特に青少年の科学技術に対する関心向上、科学技術と技術者に関する国民の理解を深める方策について情報交換を行う、「科学技術人材育成コンソーシアム」の第3回シンポジウムが開催されました。

 今回は未曽有の大震災の被災を一つの契機として、我国の科学技術人材育成の課題を改めて見直すことを目的に、阿部博之東北大学名誉教授による基調講演「岐路に立つ日本−ガラパゴス化からの決別に向けて」と一般講演として、各方面での理科教育についての最新の実践事例を紹介されました。
 「日本の未来を創る人材育成−大震災を超えて−」と題するパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッションには国・経済界・大学等の各方面よりパネリストをお招きし、広い角度からの議論が行われました。
 以下にその内容の一部をご紹介します。

シンポジウム光景
シンポジウム光景
シンポジウム光景
パネリストの方々

開催概要
日時:平成24年1月21日(土)13:00〜17:00

会場:日本学術会議講堂 (東京港区六本木7-22-34)
        地図:http://www.scj.go.jp/ja/other/info.html

主催:日本工学会科学技術人材育成コンソーシアム
        日本学術会議 (土木工学・建築学委員会、機械工学委員会)

共催:科学技術振興機構、河川環境管理財団、軽金属学会、電気学会、
        産業競争力懇談会、土木学会、日本工学アカデミー、日本機械学会、日本技術士会、
        日本技術者教育認定機構、日本建築学会、日本鋳造工学会、日本鉄鋼協会、
        日本非破壊検査協会、日本マリンエンジニアリング学会、日本塑性加工学会

後援:文部科学省、経済産業省、国土交通省、日本経済団体連合会、朝日新聞社

講演等概要(講師等の敬称略)
総合司会:笠木 伸英(コンソーシアム副代表)、松井幹彦(コンソーシアム幹事)
開会挨拶:池田 駿介(コンソーシアム代表)
  1. 基調講演
  2. 理科教育支援における新しい試み−事例紹介
  3. パネルディスカッション:大震災と科学技術人材育成
    コーディネーター:有信 睦弘(東京大学監事、コンソーシアム顧問)
    パネルディスカッション:日本の未来を創る人材育成−大震災を超えて−
    有信 睦弘
     東日本大震災は科学技術の様々な課題を明示すると共に震災や原子力発電所の事故からの長期的な復興に向けて科学技術の重要性も益々高まっている。また、タイの水害はグローバル化した経済の実態を顕在化させた。一方、少子高齢化が進む日本では調和的成長と復興のためには不断のイノベーションが不可欠である。将来に向けて、イノベーションを牽引する人材の育成が焦眉の急である。様々な立場、観点から将来に向けた人材育成についての議論を元に、課題と方向性の共有を目指した。
     日産自動車の久村氏は自動車の技術開発を牽引してきた背景を基に、企業におけるイノベーション人材、戦略的研究開発への取組み、産業構造と求められる人材等にわたり、幅広い視野から人材育成の課題等について講演。
     東京理科大学の北原教授は物理オリンピックの主催者としての背景に基づき、グローバル化(流通・通信手段の高速化・広域化、産業の巨大化)により、一国一地域の変動がたちまち全世界に影響を及ぼすこと、課題の複合化で様々な知識を総動員して多角的に戦略をたてないと解決しないこと等を強調。必要な能力は、一方で高い専門性とともに、「協働する知性」であるとして、物理オリンピックの取組みの例と、参加者の成長や日本の教育水準がわかること、その後のネットワークの形成等について講演。
     経済産業省の能見氏は行政の立場から科学技術人材育成の重要性を指摘。技術者・研究者の雇用動向、学生の工学系離れ、これらの環境の中での経済産業省の産学人材育成パートナーシップ事業の概要等人材育成に関する施策を紹介。リーマンショック後の大学生の就職環境の悪化にも関わらず、職種別に見れば、専門・技術職は常に他の職種より不足感が高く、企業のニーズは強いこと、日本人も外国人雇用と競争する時代になってきたため、イノベーション人材の育成は重要な課題となっていること等を指摘。初等中等教育段階での課題、大学での教育手法の改善等にも言及。
     日本経済団体連合会の吉村氏は、産業界の立場で、世界と日本の教育界と行政を視野において人材育成にとりくんできた背景を基に、日本経済団体連合会の取組み、産業界と大学の連携、企業各社に求められる取り組み、大学等への期待について講演。欧米やアジア諸国においイノベーション政策の文脈の中に人材育成が位置づけられ、その強化に努めていることと比較して日本の取組みが危機感に乏しいことを指摘。産業界としては、「たくましい」科学技術人材を求めており、産官学が連携した育成が急務であると主張。
     パネリストからの指摘に基づき、パネリスト間での議論、フロアからのコメントや議論が活発に行われ、具体的なアクションプランをまとめるには至らなかったが、問題意識が共有され、今後やるべきことについても共通の認識が得られたと思う。
    以上
閉会挨拶:松P 貢規(コンソーシアム副代表)
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