東日本大震災と福島原発事故からの日本新生に向けて
〜工学の社会的使命の再確認と実践に向けて〜
このたびの東日本大震災と津波のために亡くなられた多数の犠牲者の霊に対して衷心より追悼の念を捧げるとともに、物心ともに甚大な被害を受けられた皆様にも心よりのお見舞いを申し上げます。
また、今の今も被災した地域の復興と原発事故の収束に命を懸けておられる方々に対して、最大の敬意と激励を送ります。
何よりも今、最優先すべきことは福島原発事故の収束と被災地の復活に向けたグランドデザインです。同時に、私たち工学によって立つものは、今一度工学の原点に立って社会からの信頼の復元を図るとともに、この国難の克服に貢献するミッションを持つことを再認識せねばなりません。工学の原点は「天と地の空間において価値あるものを創造する人間の営み」にあります。
しかしながら今、日本の持続可能な発展の柱となるべき技術とその学術体系である工学に対する社会からの信頼は危機に瀕しています。この社会からの信頼の復元にとって不可欠なことは、このたびの災害の原因と事故の進展に対する事実(Fact)の詳細な究明と社会への見える化です。
自然現象と工学的・社会的要因とに分けて、地震発生からの時刻歴での事象と相互の連関の分析・検証を行うことを提言します。まさに、工学的に精緻さを確保し、社会的に透明性を確保した東日本大震災と福島原発事故の究明が必須です。そのためのロードマップの確立と産学官連携による事故調査特別委員会の編成を政府に提言します。
このロードマップと事故調査の確実な実行によってのみ、社会からの技術と工学、および行政と産業に対する信頼を復元し、ひいてはエネルギー・環境・経済の両立等、21世紀の日本と世界の持続可能な発展に向けた選択肢とシナリオの社会・国民との共有が可能になることを覚悟せねばなりません。
日本工学会を構成する工学関連学協会と構成会員はそれぞれの社会的立場から、その使命を発揮するとともに、以上の工学の原点に立った社会的課題に連携して取り組むことを期待します。
平成23年5月1日 (社)日本工学会 会長 柘植綾夫
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