会長挨拶
日本工学会 会長就任のご挨拶「3期目を迎えるにあたって」
公益社団法人 日本工学会
会長 岸本 喜久雄
(東京工業大学名誉教授、日本工学アカデミー会員)
この度、会長として3期目を迎えることになりました。引き続き会員の皆様方とともに日本工学会の使命を果たせるように努めて参ります。日本工学会は、1879年に工部大学校(東京大学工学部の前身)の第1回卒業生23名によって創立された日本で最初の工学系学術団体です。我が国の工学の発展に伴い、分野ごとに個別の学会が設立されるのに伴って、1922年に個人会員制から学協会を会員とする体制に変更され、現在に至っています。現在は約100学協会により構成されています。日本工学会は、我が国の工学系学術団体の原点であるとの認識のもとに、学協会の連合体組織であることを活かして、工学および工業の進歩発展を図ることを目的に活動しています。現在の本会の財政は決して潤沢なものではありませんが、理事会メンバーをはじめ関係者のご協力を得て、本会に相応しい活動となるように工夫を続けながら推進して参りたいと思います。賛助会員ならびにフェローの皆様からの篤いご支援は本会の活動の大きな支えとなっております。その期待にも応えて行きたいと思います。
日本工学会は、UNESCOの援助の下に1968年に設立された世界工学団体連盟(WFEO)に、日本学術会議とともに1972 年に加盟が承認され、世界の工学コミュニティの一員としても活動を行っています。2015年には第5回世界工学会議(WECC2015)を主催し、産業界、学術界、教育界、行政ならびに市民の総力を挙げた取り組みにより、我が国の「社会を支える工学」、「社会イノベーションを創る工学」の実践例を世界に発信するとともに、ここでの議論を「WECC2015 京都宣言」として公表しています。
UNESCOは、WFEOが創立50周年を迎えたことを契機にエンジニアの活動を広く人々に認識してもらい、あわせてSGDs の推進に貢献することをアピールする目的で創立日の3月4日を世界エンジニアリングデイとして採択しました。これを受けて、2020年には世界各国で記念行事を開催することになりました。我が国でも、日本工学会が日本学術会議、日本工学アカデミーならびに関係学協会の協力を得て、これまで記念シンポジウムを4回開催し、本会の中心的な行事として定着いたしました。シンポジウムの構成としては、第1部は「技術者の役割・未来」を、第2部は「未来を拓く工学」を対象として、毎回テーマを設定し、登壇者によるショートスピーチに続いてダイアローグ形式で意見交換を行いました。これまで幸い登壇者に恵まれ記念シンポジウムとして相応しい意見交換ができたように思います。多様性と包摂性のある社会の実現ためには、工学の未来像としてどのような望ましい姿があり得るのか,これからも皆様と一緒に考え,それを実現する道を探っていきたいと思います。また、我が国では、世界エンジニアリングデイの存在を知る方々は限られています。その認知度を上げていくことも課題であります。
環境問題をはじめ世界には様々な社会課題が存在し、その解決には工学分野を専門とする人々の弛まない挑戦が求められます。日本工学会の役割として求められるのは,工学に携わるこのような技術者・研究者の活躍を支援するとともに、未来社会を拓く工学の発展を促進することにあると考えます。会員の皆様のご協力のもとにこの役割を果たして参りたいと思います。
2023年6月2日